妖精標本 魔法の不思議雑貨
**魔法の不思議雑貨**
Atelier SEIでは、クリスタルや羽、時を連想させる歯車、異界へと繋がる鍵、不思議な森のキノコ達など、魔法がかかったファンタジーな世界の不思議雑貨を制作しています。
なかには小さな物語や詩を持つものもあります。
*****魔法の不思議雑貨の物語*****
「妖精標本」
埃と黴と 微かなジャコウの香りがたち込める 古い骨董品店。
煤けた鉱物標本や 乾燥した蝙蝠 ガラス瓶の中から睨んでいる双頭の蛇。
命のないモノ達が 息を詰めて 一点を見つめています。
ほどなく 大仰なベルの音が鳴り 店の扉が開いた時
そこに ヒトならざる者が 立っていました。
彼の事は 今は語ることはできません。
いくつかの 物語を経た後 語る時も訪れましょう。
彼は ゆっくり店の奥を目指し ちいさなガラスの筒を手に取りました。
その筒の中には 蒼い鱗粉が残る 崩れかけた小さな翅。
ガラスの中の その翅は 彼の手の中で 次第に蒼く発光し始め
微かな振動が 掌に伝わってきます。
不意に現れた 年老いた店主が そっと呟きました。
「随分 待っていたんじゃよ」
ちらりと 店主を振り返った彼は 悲しげに微笑みました。
「知っていたよ」
店主は 手の平を軽く振って 別れを促しました。
「もうすぐ陽が落ちる。 早くおいき。」
彼が翅を懐にしのばせ 店の扉を開け
夕闇せまる街中へ 一歩踏み出した時
その店は 煙のように跡形もなく 消え去ったのでした。
*****Atelier SEI*****
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